BTSJ活用方法講習会の趣旨
「BTSJ活用方法講習会」は、主に、「総合的会話分析」(宇佐美、2008)※1 という方法論の枠組みで研究するための「研究方法論」についての講習会です。ただ、そのために、「BTSJシステムセット(略称)」を開発し、「BTSJ話し言葉コーパス(略称)」も公開してきましたので、システムセットの使い方や話し言葉コーパスの活用方法も含めた講習会となっています。
ただ、「BTSJシステムセット」を生かして、有意義な研究を行っていただくためには、「総合的会話分析」の理論的背景や主旨を正確に理解した上で活用していただくことが極めて重要です。そのため、本システムの配布は、講習会をすべて受講した本人のみに限らせていただいております。
講習会は、部分的参加も可能ですが、その場合、本システムセットは配付できませんので、予めご了承ください。
尚、「BTSJによる日本語会話コーパス(トランスクリプト・音声)2017年版」は、別途、利用申込みをして許諾が得られれば、講習会を受講しなくても、利用できます。
背景
言語社会心理学研究室では、約20年の間に、「総合的会話分析」という方法論に適するように、会話の文字化の原則である「基本的な文字化の原則(Basic Transcription System for Japanese: BTSJ)」を開発し、また、その後、時間と労力のかかる文字化作業を少しでも効率化して、より多くの方に会話データに基づく有意義な研究をしていただきたいと考え、2009年には、入力支援と自動集計システムを、また、2011年には、複数ファイル自動集計システムを搭載した「BTSJシステムセット(略称)」を開発し、「BTSJで文字化した資料」に、研究目的に応じたコーディング(タグ付け)を行うと、基本的な記述統計が自動算出・表示できるようにし、これまでに、機能追加や改訂を行ってきました。
また、BTSJで文字化した資料や、プライバシー保護処理を行った音声・動画を集積し、何度か追加・データの部分修正を重ねながら、この度、「BTSJによる日本語話し言葉コーパス(トランスクリプト・音声)2015年版」(約360会話)をまとめました。
これらの経験を通して、これからは、構築に膨大な時間と労力を要する「話し言葉コーパス」のあり方は、一個人や機関が集積して、希望者に配布するという一方向の関与ではなく、語用論、対人コミュニケーション研究などに興味を持つ研究者、大学院生らが、データを提供しあって、共同でコーパスを構築し、さらには、そのコーパスをデータベース化することによって、必要なデータを検索し、ダウンロードできるようにする「共同構築型コーパス・データベース」が必要だと考えるに至りました。
このようなプロセスを経て、開発したのが、「共同構築型自然会話データベース」(NCRB : Natural Conversation Resource Bank) です。NCRBに、自然会話の分析のための「音声・動画」と「BTSJシステムセット」で文字化した資料を、各自がアップロードすることによって、データベースにデータが収納され、データベースの一部となり、検索やグループ化が可能になりました。
BTSJシステムセットで作成した文字化資料を、NCRB(Natural Conversation Resource Bank)というWEB上のデータベースと連動させることによって、文字化資料にタイムスタンプをつけ、動画と連動させることなど、様々なことができるようになりました。「共同構築型データベース」として、広く関係の方々にご活用いただきたいと思っています。
また、NCRBのサイトの「教材を作成したい方はこちら」から入ると、「自然会話教材作成支援機能」を用いて、文法事項のみならず、会話のストラテジーや、ポライトネスに関しても説明や情報を入力画面で入力していくことによって、半自動的に、動画とその文字化資料を核とする「自然会話を素材とするコミュニケーション教材」を作成することができます。
是非、これらの機能をフルに活用していただきたいと思います。
それでは、講習会でお会いできますことを楽しみにしております。
研究代表者
次回講習会開催予定
日時:決定次第、告知します。
場所:決定次第、告知します。